仙台高等裁判所 昭和24年(を)640号 判決
尤も右証言の一部には伝聞にかかるものがあるけれども、原審第三回公判調書によれば、原審弁護人及び被告人は、原審から証拠の証明力を争うことができる旨告げられたのに対し、何も争うことはない旨陳述していることが明かであるから、右伝聞にかかる供述も刑事訴訟法第三百二十六条により、証拠能力を有するに至つたものと解すべきである。
(中略)
窃盗罪は他人の管理に属する財物を窃取することにより成立し、その財の所有者を決定することを要しないところ、原審第三回公判調書中証人大柳善一の供述記載によれば、本件熊野宮は宗教法人令により設立された法人ではないけれども、氏子総代六名あつて同宮の経費及び社殿等を管理し、ただ平素の社殿内外の事実上の管理はこれを元神宮浅利某に一任し、その報酬として同宮に対する賽銭は全部そのままこれを同人の所有とする契約であること、賽銭箱は鍵のかけてある拝殿の戸口の内部に備付けてあつて、浅利がこれを管理しており、随時開箱してその賽銭を取出していたことが各認められるから、喜捨せられた賽銭は賽銭箱に投入せられると同時に、右管理人浅利某の占有に帰属するものというべきである。従つて、これを賽銭箱から持去つた被告人の所為は窃盗罪を構成すること勿論である。(なお前記の如く窃盗罪においてその目的物たる財物の所有者を認定することを要しないけれども右賽銭の所有権は賽銭箱に投入せられると同時に右熊野宮設立の主体に一旦帰属の上、前記の契約により直ちに右浅利某に移転するものというべく、原判決説示のように右賽銭が無主物であるとは解されない。)
(後略)